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2016.07.29

劇団からのお知らせ

[対談]中屋敷法仁×KAORIalive

「内と外の変化に対応できるから、女性は強い」

『艶情☆夏の夜の夢』で振付を担当するKAORIaliveを迎えた特別対談。web掲載の前編では、互いが仕事の中で感じる男性と女性の違いについてトーク。まずは、女性特有の身体性をテーマに語り合った。

「ブス」と言われることへの覚悟

中屋敷 かつてイギリスでは、シェイクスピア作品は男性だけで演じられていたんです。で、2000年に入っての日本で、蜷川幸雄さんを中心に男性のみで上演するシェイクスピア劇が流行ったことがありまして。その流れに対するアンチテーゼとして、2011年から女優のみでシェイクスピアを作る「女体シェイクスピア」というシリーズを始めたんです。最初はノリで始めた部分もあったんですが、だんだんやめられなくなってきました。それで「女性が舞台に上がるというのはどういうことなんだろう」、「女体という素材をどう活かせばいいんだろう」ということをすごく考えているんですけど…、僕は女性ではないじゃないですか? だから女性であり、かつ創作の中で女性の身体と向き合っていらっしゃるKAORIさんに、いろいろ話を聞けたらと思っています。

KAORI 私たちのチーム(Memorable Moment、以下MM)には男性が2人いるんですけど、女性に近い感覚を持った男性なので一緒にいて違和感がないんです。でも、オトコオトコしている人がメンバーにいたら、うまくいかなかっただろうなと思います。女性が多いチーム、女性的な感覚を持ったメンバーだからきちんと1日にやることを計算しながら稽古を進められるし、アイデアもみんなでバーッと言い合ったりもできているんじゃないかなと思いますね。

中屋敷 僕も男優さんにはお芝居をやりっぱなしの人が多いと思いますね。その点、女性のほうが、人にどう見られているかということに対する意識が高い。今の稽古場で女優たちの間で話題になっているのも、「今の自分がどれくらい美しいか、あるいはそうでないか」ということだったりしますから。自分の容姿のパフォーマンスがどれくらいのレベルにあるか、客観的に把握しているんですよね。

KAORI 女性は年齢による身体の変化が男性より大きいし、1カ月の中でもサイクルがある。だから「今日はこういう状態だから、こうしないといけない」と考えたり。そういう部分は男性よりも大きいような気がします。

中屋敷 そういう変化って、本人にとってはものすごく厄介かもしれませんけど、逆に僕は、自分の身体の変化をアジャストした女性のパフォーマンスから刺激をもらっているというか。女性は自分の身体を疑えるんですよね。他人から見て今日の自分はどういう風に見える状態なのか、客観的に見た上でそれを利用している。たとえきれいな人でも、パフォーマンスの世界に入って人前に出たら「ブス」とか「つまらない」とか、いろいろ言われるわけじゃないですか?

KAORI そうですよね。

中屋敷 でも、それに対する覚悟ができている。だから強い。逆に男の子はふだんブサイクと言われてないから、いざ言われると泣いちゃうんです。

KAORI 女性って、そこは強いですよ。中屋敷さんから見て、役者さんをやりたがるのは男性と女性、どちらが多い印象がありますか?

中屋敷 女性のほうが多いですね。ただ最近は学校の演劇学科とかミュージカルコースでも、そこを志望する男性が増えているらしいですけど。でもやっぱり女性のほうが多いのかな。

KAORI ダンスの世界でも女性のほうが多いです。自分の経験の範囲内での話ですけど男性は少ないです。男性にダンスを始めた動機を聞くと、「モテたくて始めた」という人がほとんどです(笑)。逆に女性には、モテたくてダンスを始める人はほぼいないですね。

中屋敷 僕の息子、3歳でバレエ教室に通ってますけど、確かに見ていると、あれはモテたくて続けてるんだろうなと思う(笑)。女優さんにも、今KAORIさんが言ったようなタイプの人が多いですよ。だから褒めても全然喜んでくれない(笑)。生半可な言葉は効かない気がします。チヤホヤされるのとは違うところに自分の視座があるというか。

KAORI 男優と女優だったら、どちらがやりやすいですか?

中屋敷 男の子は変化に対して、実は心も身体ももろいところがあると思うんですけど、そういう意味で言えば女性のほうがやりやすいです。さっきの話にあったように、女性は日々の身体の変化を感じ取って、それに対応していくじゃないですか?

KAORI ええ。

中屋敷 その分、外的な変化にも対応できるから強い。柿喰う客の女優たちも強いですよ。男優のほうが体力や筋力はあるんだけど、根性という部分では女優のほうが断然強い。泣いたりしないし、どっしり構えている人が多いです。それは僕自身が、そういう人のことを女優だと思って集めているからなのかもしれませんけど。

女性の身体だけが表現できる「表情」

中屋敷 KAORIさんは、振付家として女性の身体を使った表現を作られていますけど、女体を使って創作する際に意識しているのはどんなことですか?

KAORI MMに関しては言えば、表現に美しさは絶対必要だと思っています。そして美しさを一番出したいと思っているのがトルソー(胴体)の部分です。だからそこを意識して作ることは多いですね。あとは首の角度などですね。

中屋敷 ダンスでなにかを表現するときの、男女の一番の差はなんですか?

KAORI それもやっぱりトルソーのような気がするんですよね。トルソーのラインが男性は短いけど、女性は長いし骨盤も広い。だからくびれも出るし、そのくびれがセクシーだったりするじゃないですか? ここのニュアンスで女性らしさをすごく出せると思うので、ここを伸ばしたり、ねじったりする振りが私はすごく多いですね。私が昔いたカンパニーは女性ばかりで、そこの先生は「女は絶対、美しくあれ」とすごくおっしゃる先生だったんです。その言葉がずっと自分の中にあって、それを考えた上でトルソーの動きと首の角度…、女性はうなじがきれいとか言うじゃないですか? ここの角度一つで女性はすごく見え方が変わるから、この二つはポイントにしているかな。男性と全然違うのはそこかなって思います。指先の動きとかもありますけど。

中屋敷 僕は女性のほうが顔ではなくて、身体の表情が豊かだなと思っていて。僕は動きが女性っぽいと言われることが多くて「なんでだろう?」と思っていたんですが、手振りなどの仕草が多いんだと気づいて。この程度のことで女性っぽいと言われるということは、いかに男性の身体の表情が限られているか、ということですよね。

KAORI そうですね。曲線的なところや柔らかさは、女性の動きのほうが豊かですね。昨日も別の振付で男性ばかりをやったんですけど、やっぱり身体が硬かったし直線的な動きのほうがいいんですよね。とくにダンスをやられていない方は直線的な動きしかできないので、曲線的な動きをやると、ちょっと気持ち悪くなってしまうんですよ。

中屋敷 出演者の男の子が写真だとすごくカッコいいのに、実際に会うと全然カッコよくない場合があるんですけど、そういう場合の大半が身体がブスなんですよ。たとえば猫背になっているだとか。もちろん顔はカッコいいんだけど舞台に立ったときには、その人の全身が見えるわけだから。こういうことはなかなか周りの人も指摘しないんでしょうけど。だから女優でも顔ばかりを気にせず、全身に気を配れる人は素敵だと思いますし、僕は女優にも「猫背になっているからもっとこうして」みたいなことをガンガン言います。

KAORI 言うんですか?

中屋敷 すごく言いますね。あと、自分の中でこのシリーズは「女体シェイクスピア」であって、「女優シェイクスピア」ではないという思いがありまして。というのも、男性だけで演じられるシェイクスピア劇では、あまり俳優の身体の差を使えていないような気がしていて。だからこのシリーズでは女性の身体というものにこだわって、そこから発される言葉とか存在感、そして女性ばかりが集まったときの空気を演劇的に利用できないか、ということを考えるんですよね。そもそも僕の女体コンプレックスは、女性のほうが身体のバリエーションが豊富だなというところに端を発しているので。あとシェイクスピア劇は男性社会の中で書かれた作品なので、女性は男性よりも格下の扱いであることが多いし、そこからはみ出す女性は、だいたいコメディエンヌか魔女のような悪者で普通のラインの女性が出てこない。そういう部分についても、女体を使うことで観る側の視点を変えたいと思っています。

(『艶情☆夏の夜の夢』公演パンフレットに続く)

KAORIalive

京都府出身。ダンサー/振付家/表現系ジャズダンスカンパニー「Memorable Moment」リーダー。16歳よりダンスを始め、プロダンサーとして日本、フランス、LAなどで活躍するほか、振付作品はDANCE@HERO 4th SEASON、Legend Tokyo Chapter.4などの国内コンテストで優勝、海外コンテストでも高い評価を受ける。主な振付作品に宝塚歌劇団雪組『るろうに剣心』、東宝ミュージカル『1789 バスティーユの恋人たち』など。Memorable Momentとしても、日本を代表するストリートダンス系カンパニーとして国際交流基金アジアセンター主催『DANCE DANCE ASIA』海外ツアーへ参加するなど、京都を拠点に国内外で活動している。