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2016.08.03

劇団からのお知らせ

[対談]中屋敷法仁×DE DE MOUSE

「後出しジャンケンで、シェイクスピアを身近に」

『艶情☆夏の夜の夢』で音楽を担当するDE DE MOUSEと、中屋敷が語り合うクリエイター対談。web掲載の前編では、この作品の中で生まれたコラボレーションがどのように進行していったのかを振り返ってもらった。

完成曲が送られてきた理由

DE DE 作・演出のウォーリー木下さんがディレクターを務める「多摩1キロフェス」というイベントがあって、そこに僕は音楽としてずっと参加していたんですけど、2014年に柿喰う客さんが出演したのが、中屋敷さんとの初めての接点でしたね。ただ僕自身は、演劇というものを初めて観たのが去年だったりするんです。そのときに映画よりもインスタレーションというか、ライブに近いものだという印象があったし、今回のお話をいただいたときに、柿喰う客は結構ひねくれたことをやるだろうなというイメージがあったんですね。それで「せめぎ合いながら作品を作れたら面白いな」と思って引き受けました。

中屋敷 柿喰う客って、大学の演劇サークル仲間や友達ではなくて、バラバラなキャリアの人間が集まって形成された集団なんです。そういう人同士がコラボレーションしようと集まった場所といいますか。だから音楽家さんや振付家さんとコラボレーションするときにも、うちの劇団らしい表現を作ってもらうのではなく、新しいものを持ってきてもらってコラボレーションしたいと思ってきましたし、今回もDE DE MOUSEさんからも刺激をもらって、新しいアイデアを生み出したいとも思っていたんです。

DE DE 僕も舞台音楽はやったことがなかったけど、普通のことをやってもつまらないじゃないですか? そうしたら打ち合わせで、中屋敷さんから「登場人物の心境とかを音にしてほしいわけじゃないので、自由にやってほしい」と言われたので、「お! 来た! じゃあ好きにやろう」と決めて(笑)。あとシェイクスピア劇だけど舞台を日本の夏祭りにするという中屋敷さんの話からは、僕が持っていたイメージにすごく近いものを感じたし、僕は郊外の空気感を音にすることを創作のテーマにしているんですが、そういう感覚も入れてみたいという話をしたら、中屋敷さんが「そういう要素も欲しい」と言ってくれて。だから、僕がやりたいと思ってたことをやらせてもらおうと思ったし、それならラフなものを送りながら完成させていくのではなく、完成させたものを聞いてもらったほうがいいだろうと思って…。

中屋敷 全曲、完成されたものが一気に送られて来ましたね(笑)。

DE DE 打ち合わせをして「ああ、この人なら大丈夫だ」と勝手に感じてたから(笑)。ふだん、ここまで自信を持って、最後まで完璧に作って渡すことがあまりないんですけどね。「こういうのできたから、この方向でいいですか?」と確認するんだけど。それは、最初に作った曲に「これ、いけるかも」という手応えを僕自身が感じたからというのもありますけどね。すごくタイミングもよかった。ちょうどお互いの作りたいものが合致したし、うまくいくときはスッといくものだって、僕も経験上知っていましたから。

中屋敷 僕から8個のキーワードを渡して「このキーワードで作ってみるのはどうですかね?」と伝えたら、8曲がドンッと送られてきたんですよ。

DE DE 僕、そのキーワードが来る前から作ってましたもん。

中屋敷 タイトルに、すでに夏と夜と夢は入ってましたからね(笑)。

DE DE だから、まず3曲は作れるなと思って作りました(笑)。中屋敷さんに会うのはこれが3回目ですけど、なにか共感するものを感じて「たぶんここまでやっても、この人なら平気だろう」、「むしろ行き切っちゃったほうが、この人は喜ぶんじゃないか」と思ったし、出したものが生きるような演出をやってくれそうだなとか、勝手に思っていたんですよね。

中屋敷 俳優もそうなんですけど、基本的に演劇って「俺の作ったものをお前にやろう」みたいな感覚だと、絶対にうまくいかないんです。むしろ僕は「お客さんからなにかもらえるんじゃないか」という期待とともに芝居を作っているところがある。だから、コラボレーションする相手に対しても「こうしてほしい」ということではなく、「僕の知らない、いろいろなものをください」という意識で臨むんですよね。そういう意味では今回、DE DE MOUSEさんからは、すごくいろいろなものをもらえている気がしています。

演劇と音楽の間に生まれる「波」

DE DE 僕は4月の終わりくらいになると、ふらふら多摩川の河原に行くことが多いんです。音楽のインスピレーションを得たくてとかではなく、単純に景色が好きで行くんですけど。で、このお話が来て打ち合わせしたときに、河原の空気感を音にしたら面白いだろうなと思ったんですよね。あと、今のベース・ミュージック的なものと「お祭り」って相性がいいんじゃないかって感じていたから、リンクさせたものをやってみたいと以前から思っていたんです。だから、今回の話をいただいたときにこれは絶好の機会だなと。サントラ的な劇場っぽい要素と祭りのゴチャゴチャした感じを入れつつ、できるだけ抽象的かつポップにして、DE DE MOUSEの音楽として立ちすぎないように心がけました。

中屋敷 でも、僕は稽古場で悲鳴を上げてましたけどね、もらった音を聞いた瞬間に「わぁ! すごいDE DE MOUSEっぽい!」と思って(笑)。

DE DE 結構、そこは抑えたんですけどね(笑)。わかりやすく祭りらしい音を入れたり、リズム面ではブラック・ミュージック的な要素を入れたり…、あとは、ちょっとノりずらくすることで祭り感を出してみたり、いろんなことをやらせてもらいました。最終的には「もらったキーワードで作ったと言い張ればいいだろう」みたいな感じで(笑)。

中屋敷 (笑)。柿喰う客という劇団が演劇をやるミッションの一つに「演劇の大衆化」があって。10万人動員宣言もやっていますけど、たくさんのお客さんに来てほしいだけではなくて、みんなに演劇に慣れ親しんでほしいんです。だから「女体シェイクスピア」にも、偉そうで格式が高いと思われがちなシェイクスピア劇を、もっと大衆化したいという思いがある。400年前に死んだイギリス人に僕らがスポイルされるのではなく、この人が作った戯曲を、400年後の僕らが後出しジャンケンで新しく身近なものにしたい(笑)。だからこれは、シェイクスピア劇が苦手な人にも観てほしいです。観たら「シェイクスピア劇は嫌いだけど、この音楽にはノれる」ということだってあると思うんですよ。

DE DE 僕自身もシェイクスピア劇を観たことがなかったし、普通の人はシェイクスピアと言われても、たぶんタイトルくらいしか知らないと思うんですね。「どういう劇はわからないけど、タイトルがキャッチーでいいよね」くらいにしか。

中屋敷 それでいいと思います。お客様の中には「観に行く前に勉強したほうがいいのかな」と思う人もいるでしょうけど、それは本当にナンセンスなので。こういうことは、伝統的な表現に共通する問題ではあると思うんですけど。

DE DE 僕はこのお話をいただいたときに『夏の夜の夢』についてちょっと調べたんですよ。そうしたらメンデルスゾーンの『結婚行進曲』が、この劇のために作られたと知ったりして。でも調べるうちに元のイメージに引っ張られるからやめました。それよりも、なにも原作と関係ないところからパッと出てきたもののほうが、結果的によくなる気がしたので。最初の打ち合わせで中屋敷さんに話したんですけど、思い出深い出来事があったときに流れていた音楽って、シチュエーションとは無関係なものだったりするじゃないですか? 悲しいシチュエーションだから悲しい音楽にするのではなく、ハッピーな音楽だったりするほうが、その場のリアリティが浮かび上がったりするし、音楽が登場人物の心境や置かれているシチュエーションとシンクロしたり、離れたりする「波」があるほうが面白いんじゃないかな。僕としては、あえてそこを狙った部分もありますね。

中屋敷 通常の劇伴音楽だと「ここのシーンにこの曲をお願いします」とか「この台詞のときには音を落としてください」というお願いの仕方をするんですね。でも今回は音楽を聴きながら「その台詞はこのフレーズのときに言いたいから、ちょっと待って!」とか言っていて。音楽としてあるものに物語をどう合わせていくか、という稽古になっているので楽しいです。僕ら作り手側は、稽古がある1カ月の間、ずっとこの音楽と付き合っていくわけじゃないですか? 初めていただいた楽曲を聞いたときにまず、「あ、この曲で8月まで稽古期間、そしてこの夏を乗り切れそうだな」という感覚があったんですよね。「お芝居の稽古の行き帰りにも、この音楽を聴いていられるからいけるな」と思いました。

DE DE それはすごくうれしい言葉ですね! 僕も毎年、夏の思い出になるような音楽を作りたいと思っているんですけど、それが今回とてもいい形でできたからうれしくて。とはいっても僕たち、暑いのはわりとダメな感じではありますけどね(笑)。

中屋敷 うん。暑いのは苦手です。今日も僕、日傘を差してきましたから(笑)。

(『艶情☆夏の夜の夢』公演パンフレット対談に続く)

DE DE MOUSE

遠藤大介によるソロプロジェクト。作曲家、編曲家、プロデューサー、キーボーディスト、DJ。また、自身の曲のプログラミングやミックス、映像制作もこなす。沁み渡るような郊外と夜の世界の美しい響きから感じる不思議な浮遊感と孤独感は、多くのクリエイターにインスピレーションを与えている。ライブスタイルの振れ幅も広く、FUJIROCK FESTIVALやTAICOCLUB、RISING SUN ROCK FESTIVAL、GREENROOM FESTIVAL、SonarSound Tokyoなど、多くの音楽フェスティバルに出演。イギリスやフランス、ドイツなど海外遠征も盛んに行っている。近年では主催イベントnotや、音楽イベントを飛び越えた活動等も行い、ファッションやアニメ、ゲーム等とのコラボレーションワークも多い。2012年にはnot recordsを始動。8/17には本公演の音楽を収録したEP「summer twilight」をリリース。